歯科矯正を行うクリニックを選ぶうえで最もわかりやすく判断できるポイントは、初めから絶対に歯を抜かないとうたっているかどうかです。もしそう断言しているようなら要注意です。誰しも自分の健康な歯を矯正のために抜くといわれれば、不安を抱きますし、できれば抜きたくないというのが本音です。しかし、日本人であるならば歯を抜かずに行える歯科矯正は、少ないです。

もちろん少ないですが、抜歯なしに行えるケースもあります。元来日本人などのモンゴロイド系は欧米人に比べて歯が収まる奥行きが少ないので、歯並びがでこぼこになる可能性が高い人種です。そのため、日本人の歯科矯正では、7から8割が抜歯が必要で、抜歯しないあるいは抜歯ができないケースは2から3割になります。なぜ、抜歯が必要かは、歯を並べるスペースを考えればおのずと答えは出てきます。

そもそも歯が重なったり、前歯が出たりしているのはあごの内側に歯が収まり切れていないからです。ですから、数を減らさなければ歯を並べることができないのは当然のことになります。もちろん、抜歯することなくキレイに並べることもできますが、歯は並んでいるけど前に出ているカッパ矯正になってしまいます。抜歯せずに矯正できる人は、歯の数が少ない人やなくなってきている人で、その場合あごに歯が収まる可能性も高いです。

歯科矯正の治療で、でこぼこの歯を並べてきれいなかみ合わせにしようと考えているのなら、口の中にそのスペースが必要です。抜かなくても矯正ができるかどうかは、歯の大きさと口のスペースのバランスの問題になります。例えばでこぼこの量が少なくて、口の奥にスペースがあれば、歯を後ろに送ることで対応できます。または、10代の成長期で今後顎が伸びる可能性がある時期ならば抜かずに治せる可能性もあります。

しかし、日本人の大半のケースでは抜歯が必要です。それに比べて欧米人は抜かない矯正がしやすい頭の形の顔立ちをしています。その顔立ちのおかげで歯を抜かずに矯正し、歯を並べてみて少し前に出たとしても違和感がありません。日本人でも鼻が高く下あご先端の頤と言われるところの中央部分が出ていれば、多少歯が前に出ても、口元が出ているようには見えないので、抜かずに歯を並べられる可能性は高いですがまれです。

欧米人は9割が抜かない矯正をすることができます。そのため、絶対に歯を抜かないとうたっているクリニックは欧米のやり方をそのまま日本に持ってきている可能性もあるわけです。この歯科矯正の治療の歴史を見ていくと実は、歯を抜く矯正のほうが新しい治療法だということがわかります。それを日本人に合わせて改良に改良を重ねてきたのが今の治療の基本となっています。

現在日本で行われている歯を抜かない歯科矯正は2種類あり、マウスピースを使ってひたすら前や横に広げる方法とインプラントを使ったものです。マウスピースを使う方法は主に、矯正を専門とする歯科医でなく、一般の歯科医が行っていることが多いやり方です。一方、インプラントを使って後ろに歯を持っていく方法は、矯正を専門とする歯科医でも行っていることもありますが、大事な奥歯が生える場所が不足して、噛めなくなることもあるので注意する必要があります。歯を抜かないというのは、自分の要望に合っていることも多く。

心地の良い言葉です。もちろん、抜歯なしの矯正治療が行えるケースもあります。本当に抜かなくても大丈夫なのか、十分な説明をしてもらい、納得をしてから治療を受けることが重要です。歯科医が十分な説明をするためには、きちんとした診断のための資料が必要です。

正しい歯科矯正を行うためには、口腔内写真、口元や正中線を見るための顔写真、頭部や歯のレントゲン写真、歯の模型などが必要になります。このような資料もなく、絶対に歯を抜かないとい看板を掲げているのはおかしいわけです。検査結果などから、なるべく抜かない方法を模索するという具合ならば大丈夫ですが、絶対という表記には注意が必要です。歯を抜かない歯科矯正では、マウスピースを使うことがあり、見えない・目立たない矯正として人気があるのも確かです。

ただし、マウスピースだけで治るとされている場合は注意が必要になってきます。治療は、最初に型を取り歯の動きを予測して、2、3週間ごとに取り替えるオーダーメイドのマウスピースを30から40個最初に作ってもらいます。それを持ち帰り歯科医の指示通りに取り替える仕組みです。歯科医のチェックは数か月に一度でいいので、通院回数が少なくて済むこともメリットに挙げられています。

これはいわゆる矯正治療で使う、ワイヤーやブラケットなどの器具を使わないこと、マウスピースが透明で目立たないことや自分で取り外すことができることが売りの器具です。加えて、快適に食事ができるうえ、歯磨きもしやすくなっています。ただし、どんな治療にも欠点はあります。残念ながらマウスピースだけで歯科矯正が完了するケースは限られているということです。

かみ合わせがあまり悪くないケースや、歯のでこぼこが少ないケースなど、あくまでも症状が軽い場合のみになります。そのため、マウスピースだけで完了しない場合は、ワイヤーなどを使い通常の治療を行うのが一般的です。また、この件に関しては、小さく但し書きがされているので注意が必要になります。マウスピースを使った歯科矯正がいけないかといえば決してそういうわけではありません。

問題は治療を受けている自分自身が、その矯正治療の長所と短所を理解したうえで、治療をしているのかどうかです。どんな治療にも一長一短は必ずあり、その欠点をしっかり理解して治療を受けるのなら、何の問題もないわけです。マウスピースだけでは、完治しないこともあるのでワイヤーを使った従来の治療も併せて行う説明を受け、納得済みであればいいということになります。治療を受ける前にカウンセリングの段階で治療計画とゴールを明確にしてしてもらうことが重要です。

もしかしたら、マウスピースだけでも矯正が完了する数少ないケースに当てはまるかもしれないからです。歯科矯正であれば、行おうとする治療法もメリットとデメリット、治療終了までにかかる期間と治療費の総額を確認しておきます。これらを患者が納得できるように説明できない歯科医のクリニックは避けるべきで、矯正治療はやってみないとわからないというスタンスは言語道断です。また、治療を受ける側として医師に質問する勇気を持つこと、納得できなければそのクリニックでの治療はやめる勇気を持つことも大事になります。

歯科矯正というのは、屋根だけを外してできなかったでは困るわけです。歯科矯正は虫歯や歯周病を治すというような悪い状態を元に戻す復元の医療とは異なります。新しい歯並びや顔形を作り出す創造の医療です。ここが歯科矯正の難しい面でもあります。

経験や技術がある矯正を専門とした歯科医ならばこれから作り出すものを相手に提案する能力を持っているのが通常になります。自費診療の分野に入る医療になりますから金額を提示されなければ大いに不安になるものです。かかる期間と費用の全体を提案してもらい、歯科医の見誤りによって期間が延びればその責任は歯科医に見てもらうのが当然のことです。それができなければ、金銭的に治療を続けられなくなる可能性もあります。

ですから、治療前の金額提示はとても重要であり、終了前に支払う総額を知らずにスタートさせるのはとても危険です。もし、終了までの金額を提示できないクリニックなら、設計図がないまま見切り発車している可能性があるので注意が必要になります。歯科クリニックの中には月々の費用を提示しているだけでトータルでかかる金額を提示していないこともあります。その場合は、治療の期間を確認し、必ず総額でいくらかかるのかを確認することが大事です。